眠れない夜はいつもあんたを思い出す ひとりっきりの部屋であんたを身近に感じてる あんたの息が耳たぶに触れ風のように過ぎて行く あんたの顔…見えなくても唇が動いているのがわかる 眠ったようにまぶたを閉じた最後の顔が浮かんできて あんたの胸に耳を押し当てて聞いた あの音は枯れ山の風の音 きっとあんたの瞳には占い師の水晶玉のように ふるさとの景色とたおやかな時間が かげろうのように揺れていたのね
白い布であんたを抱いて坂を登ったの ヤマセに濡れたあんたの墓標で おいてゆかないでと泣いたのよ 壊れた町を見下ろす大きな橋の上から 瑠璃色の浜を見下ろせば あんたが眠る丘と橋の間を海鳥たちが飛んでゆく 芝居が終わり見捨てられた舞台のカキワリのように あんたの温もりがこびりついて 今も時計が止まったまま…
生きることも、死ぬことも、望まない… 3月11日がくれば…一年経ったと思うだけ
目を閉じればそこにいるあんたの残像は光を失わず 二人で紡いだすべての記憶を抱いて そのうちあたしがあんたの傍に行く